誹謗中傷対策とは？個人・企業・政府・海外の最新事例と対応策を紹介

SNSやインターネット上の誹謗中傷は、個人や企業にとって深刻な問題となっています。

しかし、どこからが法的な問題になるのか、どのような対策が効果的なのかを正しく理解している人は多くありません。

本記事では、誹謗中傷で訴えられる基準から個人・企業・政府・海外の具体的な対策事例まで詳しく解説します。

証拠保全の方法、削除依頼の手順、専門機関への相談方法など、実践的な対応策も網羅的にご紹介します。

適切な知識と対処法を身につけることで、誹謗中傷による被害を未然に防ぎ、安心してデジタル社会を活用できるようになるでしょう。

誹謗中傷はどこから罪に問われる？

SNSでのアンチコメントが「罪」になるかどうかは、その内容によって決まります。

特に刑法では、主に「侮辱罪」と「名誉毀損罪」という２つの罪が関係します。

どこからが罪にあたるのか、その成立条件を以下の表にまとめました。

罪の種類	成立する条件
侮辱罪	公然と：不特定または大勢の人が見られる場所で（SNSの公開投稿など） 侮辱した：具体的な事実を挙げずに、相手の人格を蔑む言葉を使った
名誉毀損罪	公然と：不特定または大勢の人が見られる場所で 事実を示して：内容が本当か嘘かにかかわらず、具体的な事柄を挙げて 人の名誉を傷つけた：その人の社会的な評価が下がるような内容で

大きな違いは、具体的な事実を挙げているかどうかです。「バカ」といった事実に基づかない悪口は侮辱罪、「〇〇は不倫している」など内容の真偽を問わず具体的な話は名誉毀損罪にあたる恐れがあります。

重要なのは、たとえ事実であっても名誉毀損は成立しうることです。

また、刑事上の罪にならなくても、相手に精神的苦痛を与えれば民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります。

誹謗中傷で訴えられる基準

誹謗中傷で訴えられる基準は、刑事罪にあたるかだけでなく、民事上の責任を問われるかどうかも重要なポイントです。
訴訟の具体的な流れは、まず「発信者情報開示請求」で匿名の投稿者を特定し、その後、損害賠償請求訴訟が提起されます。

個人による投稿であっても、法律に基づき責任を問われる可能性があるため、SNS誹謗中傷対策として投稿前に内容を慎重に検討することが大切です。

政府による誹謗中傷対策の事例

政府による誹謗中傷対策として、SNS事業者に迅速な削除を義務付ける新法の施行や、通信履歴の保存期間延長など、実効性のある対策が強化されています。

2025年4月に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」は、大規模SNS事業者に対し、削除窓口の整備や専門人材の配置、被害者からの削除申し出に7日以内に対応することを義務付けました。

また、通信履歴の保存期間も「少なくとも3～6カ月」に延長される方針で、匿名の相手を誹謗中傷で訴える際の重要な証拠が確保しやすくなります。

これらの法律は、政府主導でSNS誹謗中傷対策の効果を高めるための具体的な事例として、被害者保護と加害者特定の両面で重要な役割を果たしています。

参照：朝日新聞

企業による誹謗中傷対策の事例

企業による誹謗中傷対策は、時代とともに進化し続けています。

従来の削除依頼や法的手続きに加え、AIを活用した予防策や検索結果の最適化など、さまざまな手法が注目されています。

実際に導入されている効果的な対策事例を詳しく見ていきましょう。

SNSなどの炎上リスクをチェックできるアプリ「AI 炎上チェッカー」

SNSなどの炎上リスクをチェックできるアプリ「AI 炎上チェッカー」は、投稿前にAIが誹謗中傷リスクを判定し、企業や個人の炎上被害を未然に防ぐ効果的な誹謗中傷対策アプリです。 

弁護士ドットコム株式会社が開発した無料アプリで、過去の炎上事例や法的ノウハウを学習したAIが投稿内容を分析し、名誉毀損などのリスクを事前に予測します。

企業のSNS運用担当者が炎上リスクを回避する誹謗中傷対策として活用できるほか、個人ユーザーが意図せず加害者になる事態を防ぐ自衛策としても効果を発揮します。

投稿前にチェックする習慣をつけることで、SNS上での誹謗中傷トラブルを、未然に防げるでしょう。

参照：PR TIMES

ネット上の悪評を早期に発見する「Webリスクモニタリング」

ネット上の悪評を早期に発見する「Webリスクモニタリング」は、SNSや掲示板などを24時間監視し、企業への誹謗中傷や炎上リスクを即座に検知する効果的な誹謗中傷対策サービスです。

AIと専門スタッフが連携してネット上の投稿を常時監視し、自社に対する悪評や炎上の火種となる投稿をいち早く発見して検知・報告します。
専門家による継続的な監視により企業のブランドイメージを守り、風評被害を最小限に抑える誹謗中傷対策の事例として注目されています。

参照：株式会社エルテス

検索結果のネガティブ情報を押し下げる「逆SEO対策」

検索結果のネガティブ情報を押し下げる「逆SEO対策」は、自社で管理できる新しいサイトや記事を作成し、検索結果の上位に表示させることで、誹謗中傷サイトの順位を相対的に下げて目立たなくさせる誹謗中傷対策です。

削除依頼が困難な海外サーバーのサイトなどにも有効で、風評被害の拡大を抑える効果が期待できます。

専門対策会社のサービスを利用するのが一般的で、例えばアクシアカンパニーでは、高品質なサイト制作とSEO技術により、問題のサイトが人目に触れる機会自体を減らすアプローチを取っています。

この逆SEO対策は、直接的な削除が困難な場合でも検索結果をコントロールして風評被害を軽減する効果的な誹謗中傷対策といえるでしょう。

海外での誹謗中傷対策の事例

誹謗中傷対策は、世界共通の課題となっています。各国政府は独自のアプローチで、この現代的な問題に立ち向かっています。

SNS企業への規制強化から刑事罰の厳格化まで、その手法はさまざまです。

世界各国の取り組みから学べる対策事例を見ていきましょう。

ブラジルの場合

ブラジルの場合、政府主導でSNS運営会社の責任を大幅に強化する「フェイクニュース法案」が審議されており、海外での誹謗中傷対策法律として注目されています。

FacebookやTikTok、Xなどのプラットフォームが自社規約に違反する誹謗中傷や偽情報を削除しなかった場合、被害を受けた個人がプラットフォーム自体を訴えられるようになります。

この法律は、プラットフォーム企業に対し、違法な投稿を即時に発見し削除する体制を整備する義務を課すものです。

従来は裁判所の命令がなければ削除義務がありませんでしたが、個人の被害者救済を重視した大きな変化といえるでしょう。

参照：FINANCIAL TIMES

スコットランドの場合

スコットランドでは、特定の属性への憎悪を煽るヘイトスピーチを犯罪とする法律が2024年4月1日に施行され、政府主導による強力な誹謗中傷対策法律として注目されています。 

この法律は、人種、宗教、性的指向などに基づく憎悪を煽る言動を新たな誹謗中傷の罪と定めました。

SNS上の投稿も対象となるため、誹謗中傷で訴えられる基準を法律で明確にした事例といえます。

しかし、個人を保護する効果が期待される一方で、表現の自由を過度に制限するという懸念から施行前より議論を呼びました。

個人の尊厳を守る対策と自由な言論をどう両立させるかという課題を抱えており、誹謗中傷対策の効果と難しさを示す海外の象徴的な法整備事例といえます。

参照：Scottish Government

ドイツの場合

ドイツでは、警察が強制捜査に乗り出す厳しい措置を取っており、政府主導によるSNS誹謗中傷対策の海外事例として注目されています。

2022年、警察はオンライン上の悪質なヘイトスピーチ投稿に対し、ドイツ全土で100ヵ所以上への一斉家宅捜索を実施しました。

SNS上の投稿が単なる悪口では済まされず、現実世界での誹謗中傷の罪として捜査対象になることを明確に示しています。
この取り組みは、政府による強力な誹謗中傷対策として、海外での効果的な法執行事例といえるでしょう。

参照：COURRiER

個人でできる誹謗中傷対策

誹謗中傷の被害を受けた時、一人で抱え込む必要はありません。

個人でもできる対策は思っている以上に多く存在します。

証拠保全から専門機関への相談まで、段階的なアプローチが被害の拡大を防ぎます。

具体的にどのような対策が取れるのか見ていきましょう。

証拠を記録し保存する

証拠を記録し保存することは、誹謗中傷を受けた際に個人ができる誹謗中傷対策のひとつです。

投稿はいつ削除されるか分からず、証拠がなければその後の削除依頼や法的手続きが困難になるためです。 

警察庁も推奨するこの対策では、投稿内容だけでなく、投稿日時・投稿ページのURL・相手のアカウントIDが分かるようにスクリーンショットなどで撮影し、画像を保存します。
誹謗中傷被害に遭った場合は、まず冷静に証拠保全を行うことが適切な対応への第一歩になるでしょう。

SNSでブロック・ミュートなどを活用する

SNSでブロック・ミュートなどを活用することは、誹謗中傷を受けた際に個人がすぐに実行できる効果的なSNS誹謗中傷対策です。

心ない投稿を目にしないようにし、自身の心の負担を軽減する即時的な対応として有効です。

感情的な反論は避けましょう。感情的な反論は相手を刺激し、第三者を巻き込んで事態が悪化する恐れがあります。

相手をブロックすれば、直接的な攻撃から自分を守ることが可能です。

この個人による誹謗中傷対策は、冷静さを取り戻し、次の対策を考える応急処置として機能します。

専門家へ相談する前にできる即時的な対応であり、個人が手軽に活用できる効果的なSNS誹謗中傷対策といえるでしょう。

SNSや掲示板への削除依頼をする

SNSや掲示板への削除依頼は、投稿の削除をサイト運営者に直接求める効果的なSNS誹謗中傷対策です。

まずは各プラットフォームの通報機能を使うのが手軽です。削除されない場合は、「送信防止措置依頼」という法律に基づいた正式な手続きで、サイト管理者やプロバイダに削除を要請できます。

ただし、この正式な依頼をしても、必ず削除されるわけではありません。

法律上、運営者が削除するには「権利侵害が明らか」と判断できるか、運営者が投稿者に連絡してから7日以内に投稿者から反論がないかという条件を満たす必要があります。

そのため、投稿内容や投稿者の反応次第では削除されないケースもあります。

警察やサイバー犯罪窓口へ相談する

警察やサイバー犯罪窓口へ相談することは、殺害予告や個人情報晒しなど身の危険を感じる誹謗中傷を受けた際に個人が取るべき重要な誹謗中傷対策です。
誹謗中傷で訴えられる基準がどこからかと悩む前に、危険を感じたら警察へ相談することが大切です。

相談する際は、証拠として保存したスクリーンショットを持参し、全国共通の警察相談専用電話「#9110」か、各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口に連絡しましょう。

政府が設置したこれらの窓口は、個人による効果的な誹謗中傷対策として積極的に活用すべき相談先です。

法的措置の前に窓口を活用する

法的措置の前に公的な相談窓口を活用することは、無料で専門家のアドバイスが受けられる個人ができる効果的な誹謗中傷対策です。

例えば、総務省委託事業「違法・有害情報相談センター」ではインターネット上のトラブルについて適切なアドバイスや情報提供を行っています。 

「誹謗中傷ホットライン」は国内外のプロバイダ等に利用規約に沿った削除等の対応を促す通知を行います。

法務省の「みんなの人権110番」では、差別や虐待、ハラスメントなど、さまざまな人権問題について相談することが可能です。

これらの窓口は、自分のケースが誹謗中傷の罪にあたるか、訴えられる基準を満たすか判断する上でも効果的な誹謗中傷対策といえるでしょう。

企業・団体ができる誹謗中傷対策

企業にとって誹謗中傷は、ブランドイメージや事業継続に直結する深刻なリスクです。個人とは異なり、組織的かつ戦略的な対応が求められます。

予防から事後対応まで、企業規模に応じた包括的な体制構築が欠かせません。効果的な対策手法を具体的に見ていきましょう。

逆SEO・サジェスト対策を実施する

逆SEO・サジェスト対策を実施することは、企業の誹謗中傷対策として検索結果を積極的にコントロールし、ブランドイメージを守る効果的な対策です。

逆SEOとは、公式サイトや好意的なニュース記事を検索結果の上位に表示させ、誹謗中傷サイトの順位を下げる手法です。

一方サジェスト対策は、社名と同時に表示される「ブラック」「評判悪い」といったネガティブな検索候補の非表示を目的とします。

これらの誹謗中傷対策は専門知識が必要なため、専門業者に依頼することが一般的です。

逆SEO・サジェスト対策は、企業による誹謗中傷対策として風評被害を未然に防ぎ、安定したブランドイメージ維持に効果を発揮するといえるでしょう。

モニタリング体制を構築する

モニタリング体制を構築することは、ネット上の投稿を常時監視し、自社への誹謗中傷や炎上の火種を早期検知する効果的な誹謗中傷対策です。 

SNSや掲示板、口コミサイトなどをAIと人の目で24時間監視し、誹謗中傷がどこから始まるか分からない状況下でリスクを早期発見します。

この早期発見により、炎上による被害拡大を防ぎ、リスクのある投稿を発見次第、迅速な削除依頼や適切な対応が可能になります。

弁護士と連携した迅速な対応体制を整える

法務部や弁護士と連携した迅速な対応体制を整えることは、企業にとって効果的な誹謗中傷対策です。

この体制により、投稿が法的な誹謗中傷の罪にあたるか、訴えられる基準を満たすかなどを即座に判断できます。

また、悪質な投稿への削除依頼や、投稿者を特定する「発信者情報開示請求」といった法的手続きへ遅滞なく移行できるでしょう。

SNS誹謗中傷対策において、この迅速な対応が被害拡大を防ぐ重要な要素となります。

法律の専門家との連携は、企業の誹謗中傷対策として高い効果を発揮し、ブランドイメージを守る重要な対策といえます。

社内体制を整備する

社内体制を整備することは、企業ができる誹謗中傷対策のひとつです。

社内ガイドラインの策定や研修を通じて従業員による不適切な投稿を防ぎ、誹謗中傷を受けた際の報告・対応フローを社内で共有します。

また、SNS利用のルールを定め、炎上リスクに関する研修を定期的に実施することで、従業員一人ひとりのITリテラシーを高めます。
適切な社内体制整備は、SNS誹謗中傷対策として内部統制と外部対応の両面で効果を発揮し、企業全体のリスク管理能力を向上させる誹謗中傷対策といえます。

誹謗中傷をなくすためにはどんな対策が必要？

誹謗中傷をなくすには、事後対応だけでは限界があります。

根本的な解決には、教育による意識改革、制度的な基盤整備、そして技術的な対策が三位一体となった取り組みが不可欠です。

社会全体で築く包括的なアプローチを具体的に見ていきましょう。

学校教育におけるSNS安全教育と情報リテラシーの強化

学校教育におけるSNS安全教育と情報リテラシーの強化は、誹謗中傷問題を根本から解決し、将来の加害者と被害者を共に減らす予防的誹謗中傷対策です。 

政府も推進するメディアリテラシー教育を通じ、情報の真偽を見極める力や、発信には責任が伴うことを学びます。

法規制や削除依頼といった事後対応だけでは限界があるため、教育によって個人の意識に働きかけることが重要です。

この教育により、安易に加害者になることや、デマで傷つく被害者になることを防ぐ効果が期待できます。

相手を思いやる態度を育むことは、SNS誹謗中傷対策の土台となり、メディアリテラシーの効果を期待できる誹謗中傷対策といえるでしょう。

教職員向けネットパトロール研修と対応マニュアル整備

教職員向けネットパトロール研修と対応マニュアル整備は、文部科学省が推進する誹謗中傷から子どもたちを守る誹謗中傷対策です。

学校がいち早く生徒の被害を把握し、組織として適切に対応するための重要な取り組みです。

研修を通じて、教職員は誹謗中傷の事例や対応の手順を学びます。

マニュアルには削除依頼の方法や指導のポイントが明記されており、炎上などの事態に陥った際も、学校全体で方針を統一して行動できます。

この政府主導の誹謗中傷対策は、教職員任せにせず、学校が組織としてSNS誹謗中傷問題に取り組む体制を構築する効果的な事例です。

学校現場での誹謗中傷対策として、早期発見と迅速な対応を可能にする重要な取り組みといえるでしょう。

公的相談窓口とホットラインの整備と連携体制

公的相談窓口とホットラインの整備と連携体制は、専門知識がない個人でも適切な支援を受けられるようにするための誹謗中傷対策です。

法務局の「みんなの人権110番」や総務省の「違法・有害情報相談センター」では、専門の相談員がインターネット上のトラブルについて適切なアドバイスや情報提供を行い、誹謗中傷対策を支援します。

これらの相談機関は警察庁とも連携しており、相談内容が誹謗中傷の罪にあたる可能性がある場合は、警察の相談窓口を案内し、被害者が適切な機関にアクセスできるよう支援しています。

公的相談窓口とホットラインの整備は、政府による誹謗中傷対策として個人が孤立せずに専門的な支援を受けられる効果的な対策といえるでしょう。

SNSの誹謗中傷やヘイト投稿を削除する仕組みの強化

SNSの誹謗中傷やヘイト投稿を削除する仕組みの強化は、企業による誹謗中傷対策として不可欠な取り組みです。SNSプラットフォーム自身が投稿を削除する仕組みの改善が求められています。

Xは個人情報の晒し、YouTubeは悪質なコンテンツの投稿を明確に禁止するなど、各SNSは誹謗中傷投稿を削除するためのポリシーを定めています。

しかし、実際には「規約違反を通報しても削除されない」「対応が遅すぎる」といったユーザーの声は後を絶ちません。

この課題を解決するため、今後はAIによる監視体制の導入で悪質な投稿を迅速に検知することや、削除判断の基準をさらに透明化することがプラットフォーム側のSNS誹謗中傷対策として求められています。

誹謗中傷対策に関するよくある質問

誹謗中傷対策まとめ

本記事では、誹謗中傷対策の全体像を、個人・企業・政府・海外の最新事例とともに解説しました。

また、誹謗中傷の罪はどこから問われるのか、誹謗中傷で訴えられる基準から、SNS誹謗中傷対策やAIを活用した対策まで、被害者も加害者も知っておくべき内容をご紹介しました。

これらの内容をもとに、段階的な対応を実践すれば、誹謗中傷被害の効果的な解決が期待できます。

適切な知識を身につけることで、安心してデジタルライフを楽しめるでしょう。