法的措置とは？意味・流れ・費用・注意点・とられたときの対処法まで解説

「法的措置をとる」という言葉をよく目にすることはありませんか？しかし、実際にはどういう意味なのか、なんとなくでしか理解していない、という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、法的措置の読み方や意味を紹介するとともに、実際に法的措置を行う場合の流れや注意点について解説します。

そもそも法的措置とは？

法的措置とは簡単に言うと、裁判を起こすことです。
法的措置は、たとえば誹謗中傷や借金の未払いなどが発生した場合、法律に基づいた解決を実施する際に使用する言葉です。

ビジネスシーンなど、改まった場でも用いられる言葉なので、覚えておくとよいでしょう。

法的措置をとるとはどういうこと？

法的措置をとる方法は、民事と刑事のふた通りがあります。民事の法的措置では、弁護士を介して法的な手続きを行います。
仮処分とは、弁護士を介して、加害者が加害行為を禁止するように裁判所に要請することです。
法的措置のもう一つの方法は、刑事告訴の手続きをとることです。具体的には、警察に相談し、処罰を求めるなどします。

法的措置をとるべきシチュエーションとは？

ここからは、法的措置はいったいどのようなときにとるべきなのかを解説します。

支払いが滞っている・契約違反がある場合

料金や代金の支払いが滞っている場合は、法的措置が有効です。

また、ビジネスパートナーが契約時に約束した支払いを履行しないことによって、協議が成立しない、などといった契約違反がある場合にも、損害賠償請求や未払い金回収の法的措置を実行します。
まずは催促状を送ります。催促状には法的な拘束力は一切ありません。

催促状を送っても入金されない場合は、督促状を送ります。

内容は催促状と変わりませんが、督促状の方がより強い意味合いとなります。

また、督促状の効果を高めるために、内容証明便を利用するケースも少なくありません。

督促状を送っても入金がない場合にはじめて、法的措置を行います。具体的には、以下の処分を検討します。
これらの処分を自分で行うのは難しいため、弁護士に依頼するのが一般的です。

故意・過失による財産や物品の損害がある場合

物品の損害とは、いわゆる「物損」と呼ばれるものです。

不法行為や過失などによって財産や物品に損害が生じ、個人間で解決ができない場合、法的措置が検討されます。

たとえば交通事故でマイカーが損傷した場合、被害者は法的措置によって以下の請求が可能です。
物的損害は物品に対する損害で、傷害や死亡による損害は「人的損害」になります。

過度な誹謗中傷・名誉毀損の被害に遭った場合

インターネットのSNSや掲示板などで、悪質な誹謗中傷による名誉棄損やプライバシー侵害などの被害にあった場合は、以下の法的措置をとることができます。
インターネット上の誹謗中傷で法的措置をとる場合は、書き込みのスクリーンショットなどの証拠集めが大切です。

債務不履行や借金返済が滞った場合

代金を払わないなど、契約で取り決めた約束を守らないことを「債務不履行」といいます。

借金の返済が滞ることもそのひとつです。
また、損害賠償などに応じない場合は、相手の財産を強制的に換価・処分する、強制執行の申し立ても可能です。

知的財産侵害・営業秘密漏えいが発生した場合

著作権の侵害や商標権の侵害、また企業秘密の漏洩などが発覚した場合は、使用の差し止めや損害賠償請求といった、法的措置を行えます。
さらに、企業秘密を持ち出したのが社内の人間である場合は、就業規則に定められた秘密保持義務違反に則り、懲戒解雇処分の対象となります。

行政や公共機関から不当な処分を受けた場合

行政や公共機関が行った処分に不服がある場合は、まず、処分を行った機関に納得できる説明を求めるのが一般的です。

それでも不服がある場合は、以下の措置を行います。
わかりやすくいうと、審査請求は行政に対して直接クレームを入れる方法、訴訟提起は裁判所に行政が行った処分を取り消してもらうように訴える方法です。

法的措置をとる場合の流れ

内容証明郵便（催告書・警告書）を送付する

まずは、法的措置の対象となる相手に内容証明郵便を送付します。

内容証明郵便とは、郵便局が差出人や相手の住所、差出日時、内容などを証明する文書です。

送付する文書は、催告書や警告書など、法的措置をとる内容によって異なります。

支払督促・調停の申立てを行う

内容証明郵便を送っても、相手がこちらの要求に応じない場合は、簡易裁判所に支払督促や調停の申立てを行います。

申立ては、書類審査のみで迅速に行える点がメリットです。
相手から異議申立てがあった場合は、自動的に訴訟へと移行します。

異議申立てがない場合は、相手に支払い義務が発生します。

弁護士による交渉・示談・ADRを活用する

法的措置を弁護士に依頼した場合は、相手と交渉や示談を行うのが一般的です。
なかなか話し合いが進まず、交渉決裂してしまった場合は、ADR（裁判外紛争解決手続Alternative Dispute Resolution）を利用するのもひとつの方法です。

少額訴訟または通常訴訟の提起をする

それでも解決できない場合は、法的手続きに移行します。
 
法的手続きは、少額訴訟または通常訴訟の提起に移るのが一般的です。
手続きが簡易で、スピーディーに解決できる点がメリットです。

条件に当てはまらない場合は、通常訴訟となります。また、少額訴訟でも、被告が通常訴訟への移行を申立てた場合は、通常訴訟へと移行します。

判決後の強制執行で債権回収を図る

仮執行宣言付支払督促や、調停調書および確定判決の債務名義を得ることができれば、それらを用いて強制執行の申立てが可能です。

代金請求権の強制執行がなされた場合、財産の差押えなどによる強制回収手続きへと移行します。

誹謗中傷や風評被害には法的措置だけでなく風評被害対策も重要

インターネット上の風評被害や誹謗中傷には、法的措置だけでなく、風評被害対策を行うことが重要です。

風評被害対策とは、インターネット上の悪評や誹謗中傷、デマなどの被害拡大を予防し、信用を回復させる施策です。
インターネット上の風評被害や誹謗中傷は、拡散力が強いため、被害が長期化してしまうのが特徴です。
 
法的措置は解決するまでに時間がかかることが多いため、その間にどんどん状況が悪化する恐れがあります。
 
そのため、法的措置と並行して、逆SEOやサジェスト汚染対策などを実施し、被害拡大を防ぐことが重要です。

法的措置をとるメリットとは？

ここからは、法的措置をとるメリットについて、わかりやすく解説していきます。

弁護士による支援で交渉や手続きがスムーズに進む

弁護士に依頼することで、面倒な交渉や手続きをスムーズに行えます。

例えば示談交渉する場合も、法律の知識があまりない人が行うと、どうしても時間がかかってしまいます。

お互いに感情的になって、交渉が決裂してしまう可能性も高くなるでしょう。

また、裁判所での手続きには書類作成が必要ですが、法的根拠を示したり、証拠を集めたりと、なかなか大変な作業です。

法的根拠に基づいて有利に交渉できる

訴訟などの法的措置を行う場合、「法的根拠」が必要です。
そのためには、法律の知識はもちろん、これまで発信者情報開示請求が認められた事例についても知っておく必要があります。

弁護士に依頼すれば、これらの知識を活用して、法的根拠に基づいた主張をしてもらえるため、交渉を有利に進められるでしょう。

相手に心理的・法的圧力を与えられる

法的措置をとることで、相手に心理的・法理的圧力を与えられるため、検索交渉がスムーズかつ有利に進められる、というメリットもあります。
このように、法的措置をとることで、相手が事態を重く真剣に受け止める効果が期待できます。

判決後は相手が応じなくても法的手続きで強制的に回収できる

借金や代金の未払いに対する法的措置をとれば、判決後に相手が支払いに応じない場合に、差し押さえなどの強制的な回収が可能になります。

直接交渉するとなると、不誠実な対応を取られたり、相手と連絡が取れなくなったりすることもあります。

そうすると、債権回収できないだけでなく、ストレスも溜まってしまうでしょう。

その点、法的措置を行えば、確実に債権が回収できます

再発防止や抑止効果を期待できる

法的措置をとることで、相手に法的根拠に基づいた毅然とした態度を示せるため、再発防止効果が期待できます。

また、悪意のある行為や不誠実な行動をすれば、法的責任に問われることがある、と知らしめることは、何よりも強い抑止力となるでしょう。

法的措置をとる場合の注意点とは？

続いて、法的措置を検討する際に覚えておきたい注意点について、いくつかピックアップして紹介します。

法的措置には時間と費用がかかる

法的措置の最大のデメリットは、時間とお金がかかることです。訴訟では、裁判官が債権者と債務者の言い分を聞いて判断をするため、どうしても時間がかかってしまいます。
また、弁護士費用や印紙代など、さまざまな費用もかかります。時間と費用が掛かることで、精神的に疲弊してしまう可能性もあるでしょう。

証拠の準備不足は主張を弱める

訴訟する場合は、契約書やメールのやり取り、納品書といった証拠をしっかり集めなければいけません。
そのため、証拠不十分のまま訴訟を起こしてしまうと、裁判が成立しなかったり、敗訴したりするリスクが高くなるでしょう。

反訴や控訴により争いが長引くこともある

相手が反訴したり控訴した場合、争いが長引くというデメリットがあります。反訴とは、被告が原告を訴え返すこと、控訴とは、被告が第一審判決に不服を申立てることです。
そのため、想定よりも争う時間が長引いてしまうことも少なくありません。

示談や和解の条件によっては後悔することもある

原則として、示談成立した後には内容の変更や撤回ができないため、安易に示談や和解に応じてしまうと後悔する可能性があります。

相手の財産状況によっては回収が困難になる

民事訴訟による債権回収を行い、裁判に勝ったとしても、相手の財産状況が悪ければ回収できません。
このような事態を避けるためには、事前に相手の資産状況を調査しておく、仮差押えなどの保全手続きをとっておく、などの対策が必要です。

法的措置にかかる費用・金額とは？

法的措置にかかる費用は、大きく分けて<strong弁護士費用と訴訟費用のふたつです。弁護士費用の主な内訳は、以下のとおりです。
費用は、訴訟する金額に応じて決まります。また、弁護士費用の金額は、各弁護士事務所が自由に設定可能です。気になる場合は、事前に金額を確認しておきましょう。

訴訟費用の内訳は、裁判所手数料・郵便切手代・コピー代などです。裁判手数料の金額は、訴訟の目的価額に応じて以下のように決められています。

訴訟の目的価額	裁判手数料
～100万円	10万円につき1,000円
～500万円	20万円につき1,000円
～1,000万円	50万円につき2,000円
～1億円	100万円につき3,000円
～50億円	500万円につき1万円
50億円～	1,000万円につき1万円

法的措置にかかる期間とは？

法的措置をとって民事裁判を起こした場合、数ヶ月で終わるものから1年以上かかるものまで、期間はさまざまです。
第一審ですぐに和解が成立したり、相手が争わなかったりした場合、裁判は2～3ヶ月ほどで終わります。

一方、和解が不成立だったり事案が複雑だったりした場合、当事者が裁判に協力的な態度をとらなかった場合などは、解決まで長引くことが多いでしょう。

法的措置をとられたらすべき対策とは？

もしも何かのきっかけで法的措置をとられた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。具体的な対策方法を順を追って紹介します。

裁判所からの通知をまず確認する

裁判所から通知が届いたら、まずは内容を確認しましょう。裁判所からの通知には、「訴状」や「支払督促申立書」などがあります。
また、通知には、今後具体的にどのような行動を取ればよいのか、期日はいつまでかが明記されています。

答弁書や異議申立てを期限内に提出する

訴状が届いた場合は、答弁書や証拠書類を提出します。答弁書には原告の訴えに対する認否、被告として主張する事実およびその根拠などを記載します。

答弁書は期日までに間に合わなくても問題ありません。
支払督促申立書が届いた場合、2週間以内に異議申立てを行うと、支払督促の効力を失い、通常訴訟へと移行します。

異議申立ては、支払督促申立書に同封されている「督促異議申立書」で行います。

早期に弁護士へ相談・依頼する

法的措置をとられた場合は、早急に弁護士に相談・依頼しましょう。訴訟対応には法律の知識と膨大な労力が必要です。
また、法律の専門家である弁護士に相談することで、最善の主張と立証を選択できるため、戦略的な対応が可能です。

証拠や資料を整理して準備する

訴訟に書かれている原告の訴えに関する証拠や資料を収集・整理します。過去にやり取りしたメールや文書などは、大切な証拠となるケースが多いです。

訴訟では、証拠がないこと＝存在しないこと、として進められてしまうため、証拠がないと裁判で不利になる可能性が高くなります。

必ず証拠を整理して、準備しておきましょう。

債務整理など代替手段を検討する

借金問題で訴えられたが返済が難しい、という場合、個人再生や自己破産をする旨を答弁書に記載し、申立てを行えば、強制執行される心配はありません。
裁判を続ければ、それだけ費用もかさんでしまいます。支払い能力がない場合は、早急に代替手段を検討しましょう。

法的措置に関するよくある質問

ここからは、法的措置に関するよくある質問と、その答えを紹介します。

法的措置とは？まとめ

法的措置とは、裁判を起こすことを意味します。借金の滞納や債務不履行、インターネット上の誹謗中傷や名誉棄損が発生した場合、法的措置をとることが一般的です。

法的措置をとる場合にも、法的措置をとられたときも、できるだけ早く弁護士に相談するようにしましょう。

また、インターネット上で誹謗中傷された場合は、風評被害による二次被害が懸念されます。法的措置を検討すると同時に、風評被害対策も実施しましょう。